お好み焼き屋のおばちゃん

稽古に入って9日目？かな、もうすでに定かではない…

これまで毎回稽古終りに飲んでる自分としては、今日あたりは帰っておとなしくしようかな～なんて思ってると、背後から聞き慣れたダミ声の、お好み焼き屋のおばちゃんが「寄って行きなよ」と声を掛けてくる…

誘われるがまま中へ入ると、ふと一組のカップルが、何やらアミノ酸がどうとか、腕立て伏せをやった時の筋肉の乳酸の溜り方等の事を語っている。

その隣りに腰を下ろし生ビールに海老の塩焼きを喰らいながら台詞を反復していると、ふと見上げた窓から澄んだ空の中にぽっかりと、綺麗な半月が見えた…

ふと土井さんも無重力の中からこの月を見てるのかな～なんて事を考える…

いかんいかん台詞に集中！ほどよく酔って店を後にした自分の体に春先の空気が纏わる後ろでしきりに「気持ち悪る～！」と言ってる男の声。

振り返るとさっきお好み焼き屋で隣りにいたカップルだった…

結構飲んでるらしく、連れの女性も足がおぼつかない、そのまま二人して道路に顔面ダイブ！

心配になり声を掛けると、二人して鼻血を出しながらケラケラ笑って「土井さん飛んでる～」と。

よく見ると頭を下げ合う程度の、アパートの隣りの住人だった…気遣いながらも二人を残し先にアパートへ戻った。

風呂に入り出てくると、さっきのカップルも無事に帰っているのだろう、すでに〇〇〇を始めている声が壁越しに伝わってくる…

えっ！鼻血を出しながら？ そう思う手は自然と台本を掴み、隣りから聞こえてくる声に負けない位大きな声で台詞を発していた。

清田正浩